遺産分割調停を利用する
被相続人が遺言書を残していた場合、その内容に従い相続手続きを進めていくことになりますが、遺言書がないケースにおいては相続人間の話し合いである「遺産分割協議」を行うことになります。
遺産分割協議は相続人全員が参加し、内容に合意しない限り完了とはなりません。
しかし大きな金額が動く相続手続きでは全員が納得できる内容にまとめるのは難しく、話し合いが長期化することも多々あります。
また、何らかの理由により遺産分割協議への参加自体を拒否する相続人がいるかもしれません。その場合、相続税申告が必要なケースにおいては期限に間に合わなくなる恐れもあり、不利益を被る結果になることも考えられます。
このように、さまざまな理由から相続人同士の話し合いで遺産分割がまとまらない場合には家庭裁判所へ申し立てを行い、調停委員を通じて遺産分割協議を仲介してもらう 「遺産分割調停」を利用することができます。
遺産分割調停の申し立ては家庭裁判所に行います。また、以下の書類が必要となります。
遺産分割調停に必要な書類
- 遺産分割調停申立書
- 財産目録
- 相続関係説明図
- 相続人全員の戸籍謄本
- その他の添付書類 等
遺産分割調停の申し立てが受理されてからの流れ
遺産分割調停は、原則1か月に1回程度、最低でも4~5回の調停後に審判へと進みます。
なお、調停が不成立になった場合の審判は、裁判官により行われます。
遺産分割調停の利用で多くみられる案件
遺産分割調停を利用する案件としてよく見受けれるのは、遺留分・寄与分・特別受益が遺産分割に関係するケースにおいてです。
遺留分
一部の法定相続人が相続において最低限取得できるとされている財産の割合のことを「遺留分」といいます。
この権利は民法によって定められているため、遺言書において遺留分が侵害されている場合は遺留分を侵害する財産を取得した方に対して遺留分請求が可能です。
寄与分
被相続人の財産形成もしくは財産維持等に貢献した相続人に対し、他の相続人よりも多くの財産を分け与える制度を「寄与分」といいます。
この制度は療養看護に努めた人にも適用されます。
特別受益
被相続人から生前贈与を受けていた相続人がいる場合、その相続人は特別な利益を得ていることになります。
これを特別受益といい、特別受益を受けていた相続人がいる相続では公平な相続になるよう、遺産分割割合を決定していきます。